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現代を挙っての放心|官能的頽廃の結果、何人も人格者たる敬虔と抱負を失い、無惨にも自ら侮り人を軽んじておる一世の悪風潮に深く感ずる所あって、今年六月の始め小著「東洋思想研究」第八冊に「天子論」を出したが、これに対して実に意想外の共鳴や、また批難誤解を受けて、私は今更のように古人が立言の重く且つ慎むべきを教えた心を感悟した。
その始め私はわが天皇論に関しては寧ろ論歩の序に聊か触れたに止めたが、周囲の状況はこれを許さなかった。そして多くの人々からこの書を通じて私に寧ろ日本天皇論を聞かんことを迫られた。天皇論が今や彼等の重大なる関心事に為って来ておるのである。私は一度は沈愁し、翻って大いに驚喜した。かくしてたまたま小著の再版を機会に、私は沈思四十日、旧篇に増補訂正を加え、新たに「日本の天皇とシナの天子」を増し、真に肝胆を吐露した思いで筆を擱いた。どうか誠を掬んで読みかつ考えて戴きたい。
大正十二年八月廿日 (再版の序より)
目次
再版の序
一 序 論
二 道徳的意識と政治的意識
三 天子と官吏と民衆との関係
四 日本の天皇とシナの天子
五 西洋王政の没落とその君民思想
六 東洋王政の特徴と官吏の性質
七 結 論
後 記
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